日本酒や焼酎などの「伝統的酒造り」が、来月12月にユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなりました。
「伝統的酒造り」とは、米などを蒸した後、麹(こうじ)をつくり、もろみを発酵させるなどの一連の工程を、職人たちが気候風土に合わせながら経験に基づき手作業で行う技術です。500年以上前に原型が確立したとされています。
黄桜でも伝承の技を受け継ぎ、日本酒造りに日々向き合い邁進しています。2002年から20年以上、黄桜三栖蔵の日本酒造り責任者である「高倉敏夫(たかくらとしお)杜氏」(※高=はしごだか)に今回の登録に向けた動きについて、話を聞きました。
以下高倉杜氏(※高=はしごだか)の話です。
【無形文化遺産に登録について】和食が2013年に無形文化遺産に登録され、日本酒造りもそろそろかな、と思っていました。酒造りは500年ぐらい前から受け継がれており、先人たちが色んなやり方を模索して、技術を高め、継承されてきており、それが評価されることはとても大きな喜びです。
並行複発酵という、他のお酒には見ない複雑な発酵からできる日本酒は、他の酒造りなどで用いられる単発酵とは違った高い技術を用いて造られます。一時期の日本酒の生産量から言うと今はだいぶ減ってきてはいます。そういった危機の中、今回の登録が実現することで、今まで技術を高め継承していることへの励みになると考えています。(今回の登録で)これから世界に認められることで、日本酒の価値が高まり、広がっていくことも期待しています。
【京都伏見の酒造りについて】日本酒は、それぞれの気候風土に応じて発展し、受け継がれてきましたが、京都、特に伏見は水が豊富で、その水質が日本酒造りに合っていたことが、酒どころになった理由であると感じています。伏見を流れる中硬水という水質は、色んなバリエーションが造れるとても柔軟性のある水です。辛口のキリっとしたお酒から甘口のはんなりやわらかい日本酒も造れます。米は、毎年硬いものや柔らかいもの、水を吸収しやすいものなど、その年の天候によって異なる米質となり、都度合わせた吸水時間や蒸し方などを探っていきます。これも日本酒造りの一つの技術です。
【自身の酒造りについて】長年、酒造りに携わっていますが、仕込みの1本1本が印象に残っています。絞った後にはコメントを書き、次の仕込みへと活かすようにしています。賞をいただくお酒も造りましたが、そういったお酒も自分の中では60点を超えることはありません。私が入社して学んできた技法は、今も変わらず受け継いでいます。「黄桜本造り」は、生産開始当初から「本造り」は熱燗にするとうまい酒として先輩たちから引き継いだ技法を変えていません。吟醸酒に関しては、造りの流行りがあるので、それは時代に応じて造り方を工夫しています。
これから酒造りに関わる人たちには、その蔵にあった造りで最良を目指すためにはどうしたら良いかを考えながら学んでいって欲しいと思います。米の精米から上槽まで、どういったところを集中してやるのか、その蔵によっての特製を技術の継承も踏まえて、酒質の維持とともに向上していって欲しいですね。
高倉敏夫(たかくらとしお)(※高=はしごだか)
昭和52年(1977年)黄桜入社以来、三栖蔵で日本酒の醸造に携わり、平成14年(2002年)に三栖蔵の醸造責任者となる。平成26年には京都市伝統産業「未来の名匠」認定、令和1年京都府の現代の名工として日本酒造りの名手として各方面から認められている。